不動産投資ローンの借り換えとは?条件や流れ、借り換えが向いていないケースまで解説
不動産投資ローンは借り換えすることで、ローン返済の負担を減らせる場合があります。長期的にローン返済をしている方は、損をしないためにも一度見直しをしてみてはいかがでしょうか? 本記事では、不動産投資ローンの借り換えとはどのようなものなのか、借り換えを成功させるポイントや注意点を解説します。
目次
Toggle不動産投資ローンの借り換えとは
不動産投資ローンの借り換えとは、一番はじめに不動産投資をする際にローンを借りた金融機関から、他の金融機関へと借り換えることを指します。もともとはA銀行で融資を受けていたものを、B銀行に移動するという形です。
借り換えをする際には、前の金融機関での残り返済分を新しい金融機関が返済し、新しい金融機関で残りのローンを返済することになります。なぜわざわざ金融機関を変える必要があるのか、その大きな理由は金利にあります。
金融機関によって同じローン金額でも金利は異なりますので、より金利が低い金融機関で借り入れをすることで、毎月の返済金額を減らすことができます。そのため、不動産投資ローンの借り換えは、総支払利息を減らすことにより、運用利率を上げる目的と言えるでしょう。
不動産投資ローンを借り換えるメリット
不動産投資ローンの借り換えのメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- キャッシュフローが改善する可能性がある
- 金利タイプを変更できる
- 団体信用生命保険の内容が良くなる可能性がある
それぞれ見ていきましょう。
キャッシュフローが改善する可能性がある
返済期間を同じにする場合、金利が下がることで毎月の返済額の負担が減ります。負担が減った分、毎月や年間のキャッシュフロー改善が見込めます。
仮に、2,000万円を返済期間20年で借り入れる場合を見てみましょう。借り換え前の金利が1.8%、借り換え後に1.0%になった場合をシミュレーションします。
- 借り換え前:毎月の返済額 99,293円
- 借り換え後:毎月の返済額 91,978円
この場合、毎月7,315円、年間では87,780円の負担を削減できます。
不動産投資ローンの返済が苦しい場合、返済中に返済プランを変更するのは難しい場合があります。借り換えなら返済プランを変更せずに、毎月の負担を減らせられるでしょう。
金利タイプを変更できる
金利タイプは、市場状況などによって適切に変えることで返済の負担を減らせられます。市場金利が下がる場合は、変動金利の方がメリットはあります。
反対に、市場金利が上がる傾向がある場合、固定金利に変えることで金利上昇のリスクを避けられるでしょう。金融機関によっては返済期間中に、金利タイプを変えられますが、基本的に固定金利から変動金利への変更は難しいものです。
また、金利プラン変更には手数料が必要になります。状況に応じて金利プランを変更しやすいのは借り換えのメリットと言えるでしょう。
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団体信用生命保険の内容がよくなる可能性がある
借り換えで新しく不動産投資ローンを組む場合、それまでの団信を引き継げないため、新たに団信も加入し直す必要があります。このタイミングで、団信内容を見直し補償を手厚くすることを検討するのも良いでしょう。
近年は、がん保障や三大疾病・八大疾病に対応したものなど、保障内容の手厚いものが増えています。保障内容を充実させることで、リスク対策ともなるでしょう。
不動産投資ローンを借り換えるデメリット・注意点
借り換えにはデメリットもあるので、デメリットを理解したうえで検討する必要があります。デメリットには、次の3つが挙げられます。
- 各種費用がかかる
- 金融機関から悪い評価を受ける可能性がある
- キャッシュフローが改悪される可能性もある
それぞれ詳しく見ていきましょう。
各種費用がかかる
金融機関によっては借り換えの際、一括繰り上げ返済手数料や、抵当権抹消登記費用、融資手数料などさまざまな手数料が発生するため、借り換え時の負担は大きくなるでしょう。各種費用については後述しますが、費用まで含めると返済額が借り換え前とあまり変わらないということもあり得ます。
借り換えの際には、借り換え後の返済額+各種手数料でいくら削減できるか検討することが大切です。
ただし、借り換え時に発生する手数料や諸費用は経費として換算されるため、節税効果が期待できるというメリットもあります。場合によっては、払いすぎた所得税が還付金として戻ってくる可能性もあるため、不動産投資ローンで赤字がでる可能性がある方は検討するとよいでしょう。
金融機関から悪い評価を受ける可能性がある
借り換えは金融機関側から見れば、別の金融機関に乗り換えられたということになります。
新しい借り入れで全額返済してもらうものの、完済日以後に本来得られる利子を得られないのです。そのため、金融機関との関係性が悪くなる可能性があるでしょう。
不動産投資をするうえで、金融機関は大切なパートナーです。今後もその金融機関と長く良い関係性を保ちたい場合は、安易な借り換えはおすすめできません。
キャッシュフローが改悪する可能性もある
すべての借り換えで、返済額が下がるわけではありません。金利が下がるからと言って返済期間を短くすると、返済総額は下がっても毎月の返済額が上がる可能性があるでしょう。団信の内容を手厚くできても、金利が上乗せされてしまう場合もあるのです。
このように借り換えの条件次第では、毎月の返済額が増加してしまいキャッシュフローが悪化する可能性がある点に注意しましょう。
また、金融機関選びを誤ると、かえって今よりもローン返済額が増える可能性もあります。「借り換え=必ず得をする」というわけではありませんので、借り換え前には各種手数料も含めたキャッシュフローを計算するようにしましょう。
不動産投資ローンの借り換えにかかる費用はどのくらい?
借り換えに多くの手数料がかかり、手数料を含めると借り換えでトータルの支出が増えてしまうケースがあります。そのため、借り換えの手数料について把握しておくこと事が大切です。
借り換えでは、大きく次の3つの手数料が必要になります。
- ローン完済にかかる費用
- 新規ローンにかかる費用
- 登記費用
1つずつ説明していきます。
ローン完済にかかる費用
それまでのローンは、新しく借り入れるローンで繰り上げして一括返済することになります。金融機関によっては、繰り上げ返済に手数料がかかるので注意が必要です。
例えば、オリックス銀行の場合、繰り上げ返済の手数料は以下のようになります。
繰り上げ返済の範囲 | 金利タイプ | 借入期間 | 手数料 |
全部・一部 | 固定金利期間 | 全期間 | 繰り上げ返済元本の2.00% |
変動金利期間 | 1年以内 | 繰り上げ返済元本の2.00% | |
1年超3年以内 | 繰り上げ返済元本の1.50% | ||
3年超5年以内 | 繰り上げ返済元本の1.00% | ||
5年超 | 繰り上げ返済元本の0.50% |
繰り上げ返済手数料は、金利タイプや借り入れ期間によって異なるので、事前に確認するようにしましょう。
新規ローンにかかる費用
新しくローンを借り入れる際に必要な手数料としては、次のようなものがあります。
- 事務手数料
- 保証料
- 団信の保険料
- 印紙税
事務手数料
事務手数料は、一定の額がかかる定額型と、一定の割合でかかる定率型があります。
定額型が3~10万円ほどに対して、定率型が借入額の2%ほどが目安となるでしょう。
保証料
保証料は金利に上乗せするタイプと借り入れ時に一括で支払うタイプがあり、一般的には金利に含まれているタイプが多いものです。
団信の保険料
団信の保険料は基本プランにはかからない金融機関が一般的です。保障を手厚くする場合に、金利に上乗せされるので注意しましょう。
印紙税
ローン契約書は課税対象文章となるため、収入印紙を貼付して印紙税を納める必要があります。印紙税の税額は、ローン契約書に記載する金額によって異なります。一般的な不動産取引の価格帯での印紙税は以下の通りです。
記載された金額 | 印紙税額 |
1,000万円超5,000万円以下 | 2万円 |
5,000万円超1億円以下 | 6万円 |
1億円超5億円以下 | 10万円 |
登記費用
ローンの借り換えの場合、「抵当権抹消登記」「抵当権設定登記」の2つが必要になり、それぞれ登記費用がかかります。それぞれの費用は、次のとおりです。
- 抵当権抹消登記:1不動産につき1,000円
- 抵当権設定登記:借入額の4%
仮に、借り換えして2,000万円を新たに借り入れる場合は次のようになります。
- 抵当権抹消登記:土地+建物で2,000円
- 抵当権設定登記:2,000万円×4%=8万円
借り換えにかかる手数料は、一般的に50万円~100万円ほどになります。どれくらい必要なのかを事前に把握したうえで、「借り換え後の返済額+手数料」でトータルの支払額を判断してから借り換えを決めるようにしましょう。
借り換えの流れ
借り換えをする場合、いくつかの手続きが必要になります。
流れとしては、新規借り入れ先での審査から始まります。新しい金融機関での審査に通った後に、現在利用している金融機関での残りの返済額と返済可能日を確認し、この情報を新しい金融機関へ伝えて融資額の振り込みを待ちましょう。
融資額が振り込まれた後に、そのお金を使って現在利用している金融機関へ一括返済をします。返済後、前の金融機関の抵当権抹消登記を行った後に、新しい金融機関で抵当権設定登記をすれば、不動産投資ローンの借り換えは完了です。
借り換えに必要な情報
借り換え時には物件の売買契約書や重要事項説明書、登記簿抄本に公図、レントロールなどの不動産関係書類一式が必要です。事前審査の段階で提出する書類が異なりますので、金融機関に必要な書類を確認しましょう。また不動産関係の書類一式以外にも、収入証明など資産に関する情報が新しく必要になります。
給与収入以外にも、株式などの資産情報、現在の預貯金を証明するための通帳も対象です。収入だけではなく、不動産投資ローン以外に利用しているキャッシングやローンなどの借り入れの情報も必要ですので、自身の財産情報をまとめて提出できるよう準備しておきましょう。
借り換えができる条件
不動産投資ローンの借り換えは、誰でもできるわけではありません。いくつか条件がありますので、申請前に確認しておきましょう。
まず、借り換えができるのは過去にローンの支払いに遅れがない方が対象となります。住宅ローン以外にも、車のローンやキャッシング返済など、過去1年以内で支払い遅れがあった場合は、審査の段階で落ちる可能性が高いでしょう。
ただし、複数回の遅延や、よほどの悪質なケースではない場合には、支払い遅れから1年以上経過していれば審査の影響がないケースがほとんどですので、1年以内に支払い遅れをしてしまったことがある場合は、1年以上経ってから借り換え審査に臨むことをおすすめします。
また、不動産投資で安定した収入が見込めるかどうかも、条件となることがほとんどです。所有している物件の将来的な収入が見込めない場合や、物件の価値があまりにも低い場合などは、借り換え審査に落ちてしまう可能性が高いでしょう。
この場合、所有している物件のリノベーションを行う等、資産価値を高める努力をするほか、借り換え前に入居率を高めることも審査に通りやすくなるポイントです。現状不動産物件を保有していない場合は、できるだけ入居率が見込め、資産価値が高い物件を探すと有利でしょう。
借り換えをすべきかチェックする方法
不動産投資ローンの借り換えは上手に活用できれば返済額を減らせますが、一歩間違えると借り換えをしたことで損をする可能性があります。自分が借り換えをした方が得をできるかどうか、まずはこれらをチェックしてみてください。
まずはシミュレーションをする
借り換えをするうえで一番重要なのが、シミュレーションをすることです。現在のローン返済の現状(残債額や金利、返済期間など)を正確に把握し、その後、新しい金融機関に乗り換えた場合のローン返済状況を計算しましょう。
金利部分はもちろんのこと、借り換えに必要な手数料も考えた上でシミュレーションをしましょう。新しく借り入れを予定している金融機関によって手数料部分も異なりますので、複数の金融機関でシミュレーションすることが大切です。
また、そのうえで損益分岐点を確実に把握しておきましょう。
シミュレーションの計算式
具体的なシミュレーションの計算式をご紹介します。
まず借り換え時の繰り上げ返済にかかる手数料ですが、こちらは金融機関との金銭消費賃借契約書に記載があるパーセンテージとなります。“何年以内に繰り上げ返済をする場合は○○%の違約金が発生する”というように書かれているケースが多いため、確認してみましょう。
これと合わせて新しい金融機関での手数料は、事務手数料や保証料が挙げられます。こちらは2万円~5万円が相場ですが、10万円以上の高額なこともあるので事前に確認しましょう。
次に金利の計算についてご説明します。金融機関などに記載されている金利は年利換算となっていることがほとんどですので、まずは年利÷12をして月利がいくらなのかを計算しましょう。
これとは別に、返済回数の計算をします。返済回数は、返済年数×12カ月で計算となりますので、公式に当てはめて計算してください。月利と返済回数が出てきたら、最後に月々のローン返済額を計算します。
こちらは下記の計算式に当てはめて計算すると、月々のローン返済額が分かります。
月々のローン返済額
=借入金額×月利×((1+月利)×返済回数)÷((1+月利)×返済回数-1)
シミュレーション結果のチェックポイント
シミュレーションが終わったら、下記のポイントをチェックします。
ポイント1 金利を確認
まずは金利を確認して、借り換えすることで本当にお得になるかを確認してください。計算してみてあまり変わらないという場合、手数料の分でマイナスになる可能性もあります。
ポイント2 手数料を確認
金利がお得でも、借り換えにかかる手数料を考えると、借り換えのタイミングを考えないといけない可能性もあるでしょう。ある程度まとまった金額を支払う可能性があるため、こちらも事前確認必須のポイントです。
ポイント3 キャッシュフローをイメージ
具体的に毎月いくら返済するか金額が出てきたら、キャッシュフローをイメージします。最初の手数料支払いをしたことで生活に負担が出てこないか、返済が早まる分何か負担が出てくることはないか、不動産投資の収入がどの程度見込めるかも、このタイミングでチェックして、収支のバランスが崩れないかを確認しておきましょう。
借り換えをしない方がいいケース
不動産投資ローンでは、借り換えをしない方が良いケースもあります。
例えばこのような方は借り換えを控えた方がいいでしょう。
ケース1:同じ銀行で他のローンと併用している場合
現在利用している金融機関で、カーローンなど他の融資を利用している、またはこれから先利用する可能性がある場合は、借り換えをすることで今利用している金融機関との関係性が悪化する可能性もあります。このため、借り換えはあまりおすすめしません。場合によっては融資を打ち切られてしまうこともあるため気をつけましょう。
ケース2:違約金発生の期間がもうすぐ終わる場合
一括返済による違約金支払いは、支払いを始めてから何年以内と期限が設けられていることが多くなっています。契約書を確認して違約金発生の期間がもうすぐ終わるという場合は、期間を待ってから借り換えをした方が余計な出費を抑えられます。
借り換えが可能な金融機関と選び方
借り換えはどの金融機関でもできるわけではありません。借り換えが可能な金融機関と選び方について知っておきましょう。
借り換えが可能な金融機関と選び方
借り換えが可能な金融機関の前提として、不動産投資ローンの借り入れができる銀行が対象となります。りそな銀行や三井住友銀行などのメインバンクはもちろん、三菱UFJ銀行などのメガバンク、信用金庫や地方銀行、ネット銀行に日本政策金融公庫、ノンバンク系も一部対象です。
ただし金融機関によって、年収をいくら稼いでいれば借り入れ対象というように条件がありますので、そちらは事前に確認しておきましょう。選ぶ際には自分が対象となっているかチェックすることが大切です。
またノンバンク系は比較的審査が緩いですが、その分金利が高く設定されています。大手銀行のように審査が厳しい所は金利が低めに設定されていますので、自身の収入と合わせてどの銀行を利用するべきか考えてみてください。
借り換え時の、金融機関への交渉テクニックと注意点
今後の金融機関との関係性をこじらせないためにも、借り換え時の交渉の際には注意が必要です。「この銀行がお得だから借り換えをします」と素直に伝えてしまうと、現在の銀行から不信感を抱かれる可能性があります。
借り換え交渉時にはあくまで、“借り換えを検討している”というスタンスで話を進め、まずは現在利用している金融機関の金利をもう少し下げてもらえないかどうか、お伺いを立てるスタンスで臨むといいでしょう。
他の金融機関の金利を一通りシミュレーションすることで、相場がわかります。相場がわかれば現在の金利が高いのか低いのかがわかりますので、相場よりも高いようであれば交渉がしやすくなるでしょう。
相手に話を持ちかける場合、自分から銀行を探したのではなく、あくまで“新しい銀行側からローンの提案をされた”というスタンスで交渉を進めます。こちらは実際に話を持ちかけられていなくても、確認を取られるわけではないので問題ありません。そして上記を伝えたうえで、“自分としては付き合いの長い現在の金融機関を優先したいと考えているものの、金利負担が現状大きくて悩んでいる”というように話を進めれば、交渉の余地があるでしょう。
また、他銀行で事前審査が通過しているという資料を見せたうえでの金利交渉は更に交渉もしやすい状況が作れます。
借り換えの実例
ここで、実際に不動産投資ローンの借り換えをして成功した方の実例を紹介します。
例1
融資金額:3200万円
借入期間:19年
返済月額:152,000円
金利:0.80%(固定金利・2年後からは1.10%)
こちらの方が、毎月の返済額を減らすために借り換えを行いました。
借り換え後、金利は0.50%の変動金利となったことで、返済月額の負担が一変。ローン残高、残り支払い期間はそのままに、返済月額が147,000円となりました。
ただしこちらの場合、事務手数料や登記費用料などが別途発生するとそこまでプラスになるケースではありませんので、トータルでかかる費用によっては借り換えをすると損をする可能性があります。
例2
融資金額:5,000万円
借入期間:20年
返済月額:264,951円
金利:2.5%
こちらの方は金利が1.2%の金融機関に借り換えをしたことで大きな差が出ました。毎月の返済額は234,436円となり差額は30,515円に。総返済額は結果として732万円を超える差額が出てきたのです。
金利が倍以上変わる場合は、このように総返済額に大きな変化が現れますので、金利が重要なことがわかります。
初めての借り換えを成功させるために
初めての借り換えを成功させるためには、シミュレーションがとくに重要です。
現在の金利が高めに設定されている場合は特に、総返済額に何百万円もの差が出てきます。選択する金融機関によっても変動がありますので、自分の状況で最もお得に借り換えができる場所を選びましょう。
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