蕎麦を食う。そして財布を落とす。
八月吉日、財布を落とす。
ことの始まりは、まだ夏の日差しに汗ばむ8月の暮れの昼飯時。 夏バテ気味の胃を気遣って、昼食は蕎麦にすることに。 職場から熱い日差しの中、わざわざ駅前の蕎麦屋まで足を運ぶ。 暑いから冷たい蕎麦を食べる為に、暑い思いをして遠い蕎麦屋まで歩く。 人間とは、かくも不思議な生き物だ。
店前に貼ってあったオススメのへべす蕎麦(冷)を注文。 蕎麦は断然冷やし派です。賃貸管理部の田中です。
へべすとは、九州原産の柑橘類。 かぼすとすだちの中間くらいの大きさ。 清涼な酸味が、冷たい御出汁に浸かったコシの強めの蕎麦と相性抜群。
何故すだちではなく、へべすなのか。 その意図は不明ですが、美味しいので問題ありません。 食欲不信はどこに行ったのか、するりと完食して颯爽と会社に戻る。
蕎麦パワーで午後の業務を乗り切り、気付けば間もなく定時の頃合い。 昼間あんなに晴れていたのに、夜空はいつの間にか曇天の様相、不穏な空模様。 帰りがけにちょっとしたトラブル対応で空室物件の現調に向かう予定だったけど、なんだか嫌な予感がする。
会社を出ると、ぽつりと頬に一雫。 やっぱりかと思いながら、足早に駅に向かう。 電車に乗り、物件の最寄り駅に着き、改札をくぐり外に出ると、喧々とアスファルトに打ちつけられる雨粒の群れ。 ため息まじりに鞄から傘を取り出し、水溜りを避けながら物件を目指す。 徒歩5分もかからない駅近物件、小ぶりな折りたたみ傘でもさほど濡れずに済むだろう。
真っ暗な部屋に着くと、早々に問題を確認し、拍子抜けするほどあっさりとトラブルは解消された。 往々にして、嫌な予感なんて外れるものだ。
変わらず降りしきる雨の中、物件を背に駅に向かう。 途中、公共料金の支払いがまだなことを思い出し、コンビニへと舵を切るきる。 レジに並び、支払い票を出し、はたと気付く。
財布がない!!
タイトルでも冒頭でも書いてるので今更フォントを変えてまで強調するようなワードでもないけども!それでも! 取り急ぎ、キーケースに入れていた緊急用の1万円で公共料金の支払いを済ませ外に出る。
最後に財布を見たのは蕎麦屋の食券購入の時。
となれば蕎麦屋にある可能性が高い! 取り敢えず電話だ!
「んー、ないですねー。」
財布の忘れ物はないとのこと。
取り敢えず、電話番号を伝えとく。
駅の構内に不用心に個人情報がこだまする。
「見つかったらご連絡しますねー。」
閉店後の閉め作業中の店員の対応はどこかそっけなかった。
とぼとぼと改札に向かい、ICカードをタッチすると
ピンポーン!
改札のフラップドアが閉まる。
ディスプレイには残額不足の表示。
舌打ちを飲み込みチャージをしようと券売機に進んだところで
財布がない!!
そうだ、ないんだった。 キーケースにしまった公共料金のお釣りで取り敢えず分をチャージしようとして
キーケースもない!!
え、嘘でしょ? なんで? 落とした?
慌てて雨の中に駆け戻り、足早にコンビニまでの道を逆走すると、路傍に佇むずぶ濡れのキーケース(革)の姿。
いやどんだけ落としたんだよ。
大事に大事にポケットに仕舞い込み、今度こそ家路につきました。
翌日、会社は休み。 蕎麦屋からの電話は無い。 蕎麦屋に無いとすると、会社に置いてきてしまったか、道端に落としたか。 キーケースの件もあるし、道端に落としていても不思議はない。
取り敢えず、会社に向かうことに。 まあ、十中八九会社にあるだろう。 会社になかったら交番に駆け込むしかなくなる。。
それにしても、仕事もないのに会社に向かうだなんて、なんて無駄な。。
片道1時間かけて会社に辿り着く。
空は変わらずの曇天。
田中の気持ちを表してあるかのよう。
デスク周りを探す。 探す。 探す。。。。
よし、交番に行こう!
同僚に怪訝な目を向けられながらも、正味滞在1分程度で会社を出ることに。
会社を出ると、ぽつりと頬に一雫。 あ、デジャヴ。
交番に向かう道すがら、昨日の蕎麦屋を覗く。 折しも時は昼飯時。 昨日の席では女性が一人蕎麦を食べていた。 足元探させて下さい!っ声かけるのはいささか不審者レベルが高すぎる。
ちっ。
諦めて交番に駆け込むと、そこには先客が。 どうやら彼も財布を落としたらしい。 そうかそうか、お仲間ですか。 財布の中身は10万円ほどとか。
ブルジョワめ!
10万円の横で届けを出す。 こちらはたぶん1万円くらいだったと思う。 額は関係ないんだ。
取り敢えず、届けられないか調べてもらったが、該当する財布の落とし物はないそう。 こちらも見つかったら連絡を頂くことに。 ちなみに、今は見つかったら電話ではなく手紙で発見をお知らせ下さるのだそう。 詐欺対策だろうか。
無事に?遺失届けを出して、帰る前にもう一度だけ蕎麦屋を覗いてみる。 先程の女性は食べ終わったのか、既にカウンターには誰も居なかった。
ダメ元でかなり薄暗いカウンターの足元に手を伸ばすと、柔らかい革の感触。
・・・あんじゃん。
あんじゃん! 財布あんじゃん!
まるで泥棒のように財布を握りしめて蕎麦屋から飛び出した。
遺失届をだして3分で財布みつかる。
あ、そうだ、中身は!? 恐る恐る財布の中身を確認すると、カード類はそのままだったが、現金は2万円になっていた。
え、2万円? え、増えた? ※勘違いでしょう。
なんとも晴れやかな気分で空を見上げると、いつの間にか雨は止んでいました。 素敵な午後が始まりそうです。
取り敢えずランチは無駄に贅沢しました。
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