不動産投資のレバレッジ効果とは?リスクや失敗例と回避するためのコツをお教えします!
不動産投資では、レバレッジ効果を用いて投資をする人が増えています。しかし、聞いたことはあるけれど、レバレッジ効果の意味や、リスクについて知らないという人も多いのではないでしょうか。
ここでは、不動産投資におけるレバレッジ効果とレバレッジ効果を用いた具体例、失敗してしまった事例を元に、回避策について考えていきます。
目次
Toggle不動産投資のレバレッジ効果とは
レバレッジ(Leverage)とは、他者の資金を利用して自分の資金の利益額をあげることを言い、小さな力で大きなものを動かす、てこの原理をイメージすると分かりやすいでしょう。少ない自己資金でも、他者の資金である家賃収入を利用し利益額を高めることが可能なため、レバレッジを効かせて不動産投資を行う人が増えています。
不動産投資でレバレッジが効かせられる理由
不動産投資でレバレッジを効かせられるのは、不動産投資が融資を受けて投資できるという特徴が関係しています。
不動産を購入する際には、基本的に銀行から融資を受け物件を購入することになります。例えば、自己資金が1,000万円しかない場合でも、2,000万円の融資を受けることで3,000万円の物件投資ができるのです。
仮に同じ利回りだった場合、物件価格が高くなるほど得られる収入も高額になります。1,000万円の自己資金で1,000万円の物件に投資するよりも、融資をプラスして3,000万円の物件に投資するほうが得られる利益も大きくなるのです。
このように、不動産投資では自己資金に融資をプラスできるため、自己資金以上の投資ができ、より大きな収入を狙えるという魅力があります。
では、レバレッジ効果には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
レバレッジ効果の計算と具体例
レバレッジ効果、つまり、てこの原理を効かせる場合と、効かせない場合では大きな違いがあります。
レバレッジを効かせない場合
- 自己資金:500万円
- 融資額:500万円
- 購入物件:1,000万円
- 利回り:10%
上記の場合、利回り10%なので年間の収入は100万円です。
月の収入にすると約8.4万円になり、ここから管理費などを支払っていくことになります。
レバレッジを効かせない不動産投資を行う場合、借り入れできる融資額も低くなってしまうため、購入できる物件価格が低いものを選ぶことになります。物件価格が低いということは、家賃収入も少なくなるため、長期的に運用していく必要があります。
レバレッジを効かせた場合
- 自己資金:500万円
- 融資額:4,500万円
- 購入物件:5,000万円
- 利回り:10%
上記の場合、レバレッジを効かせない物件同様の利回りですが、物件価格が高額になるため、年間収入は500万円(月約42万円)と大きくなります。
レバレッジを効かせて不動産投資を行う場合、融資額を高く設定できるため、想定よりも高い物件を購入することができ、その分家賃収入も高くなるというメリットがあります。レバレッジを効かせない場合と、効かせた場合の自己資金と物件価格、そして家賃収入の具体例を下記の表で確認しましょう。
レバレッジなし | レバレッジ効果 | |
自己資金 | 500万円 | 500万円 |
物件価格 | 1000万円 | 5000万円 |
利回り | 10% | 10% |
年間の収入 | 100万円 ※1 | 500万円 ※2 |
※1 1000万円×利回り10%=100万円
※2 5000万円×利回り10%=500万円
どちらも、別途金利を差し引くため年間の収入より少なくなりますが、レバレッジ効果を用いた方が利益を最大化することができるのです。
不動産投資でレバレッジを効かせる場合の自己資金の目安は?
不動産投資をする際の自己資金の目安は2~3割ほどと言われています。仮に5,000万円の物件に投資する場合は、1,000万円~1,500万円が必要です。
自己資金を少なくすればよりレバレッジ効果を得やすくなりますが、少なすぎるとリスクも大きくなります。特に自己資金なしのフルローンで不動産投資すると、返済の負担が大きくなりすぎる場合や、修繕などに対応できないなどのリスクがあるのでおすすめできません。
そもそも自己資金が少ない場合、融資を引き出すのも難しくなり、条件の良い物件への投資ができない可能性も高くなるのです。反対に、自己資金を多くすることにもメリット・デメリットがあるので、自己資金をいくら用意するかは慎重に判断することが大切です。
以下では、自己資金を多くするメリット・デメリットについて見ていきましょう。
自己資金を多くするメリット
自己資金を多くするメリットとしては、次の3つが挙げられます。
- 手残りが増える
- 返済リスクが減る
- オーバーローンのリスクが減る
1つずつ詳しく解説していきます。
手残りが増える
自己資金を多く用意することで、借入額が減り返済の負担も軽減します。仮に、3,000万円の物件に投資する場合の、頭金ごとの毎月の返済額を一覧で見てみましょう。
なお、どのパターンも金利2.0%・借入期間30年で計算します。
頭金 | 0円 | 500万円 | 1,000万円 | 1,500万円 | 2,000万円 |
借入額 | 3,000万円 | 2,500万円 | 2,000万円 | 1,500万円 | 1,000万円 |
毎月の返済額 | 110,885円 | 92,404円 | 73,923円 | 55,442円 | 36,961円 |
頭金0円の場合に対して、頭金を1,000万円用意すると、返済額は毎月4万円程度変わってきます。返済の負担が減少する分、キャッシュフローの改善が見込めるでしょう。
返済リスクが減る
借入額を抑えて毎月の返済額の負担が減ることで、自己資金のプールがしやすくなります。
万が一、空室で収入が減少する場合や、突発的な修繕などで支出が増える場合でも、自己資金がある程度あればローン返済への対応が可能です。
不動産投資は、満室時以上の収入を得ることはできません。空室があれば収入が減少し、入居者が決まらなければ家賃を下げざるをえません。家賃収入は減少することはあっても、増加する見込みはほぼないものです。そのため、毎月の返済額を抑えておくのは大きなメリットとなるでしょう。
オーバーローンのリスクが減る
オーバーローンとは、物件の価値がローン残高を上回ることを言います。この状態で売却しても、売却額だけではローン残高が完済できないので手出しで完済する必要があるのです。
特に、新築物件は一度入居者が入ると価値が大きく減少するため、築年数が浅くてもオーバーローンになりやすいという特徴があります。万が一、オーバーローンの状態で、不動産投資が失敗して撤退しようとしても、ローンを自己資金で完済できなければ撤退もできない状態になるのです。
借入額を抑えることで、ローン残高を抑えられるだけでなく自己資金を蓄えられるため、オーバーローンのリスクを軽減できるでしょう。
自己資金を多くするデメリット
自己資金を多くするデメリットとしては、自己資金を貯めるのに時間がかかってしまうということが挙げられるでしょう。
レバレッジ効果を高めるためにイールドギャップを理解しておこう
不動産投資でレバレッジ効果を高めるために覚えておきたい指数として「イールドギャップ」があります。ここでは、イールドギャップについて確認していきましょう。
イールドギャップとは
イールドギャップとは、利回りと金融機関の長期金利との差のことを指し、投資の収益性を判断する重要な指標の一つです。不動産投資の場合は、借り入れの金利と物件の利回り差のことを指します。
イールドギャップ:投資物件の実質利回り(%)-ローンの金利(%)
仮に、物件の利回りが10%、借入金利が2.0%なら、イールドギャップは8.0%です。
イールドギャップを高める方法
イールドギャップを高めるポイントは「借入金利は低く、利回りは高く」です。どんなに利回りの高い物件であっても、借入金利も高ければイールドギャップは低くなります。物件の利回りが同じであれば、借入金利が低いほどイールドギャップは大きくなるのです。
融資期間が考慮されない点に注意
イールドギャップを判断する際の注意点として、「融資期間が考慮されない」という点が挙げられます。仮に、次の条件で投資する場合を見てみましょう。
- 物件価格5,000万円(借入額3,000万円)
- 実質利回り:0%(年間収入200万円)
- 借入金利:5%
この場合、イールドギャップは4%-1.5%=2.5%となります。
しかし、借入期間が20年と30年では、年間収支は次のようになるのです。
- 借入期間20年:1,737,156円
- 借入期間30年:1,242,432円
借入期間30年と20年では年間の返済額が50万円近く変わってくるため、実際に手元に残るお金も50万円ほどかわってきます。このように、同じイールドギャップであっても融資期間によっては収入に大きな差が出る点に注意しましょう。
レバレッジの注意点やリスクとは?
では、不動産投資をする場合、どの物件でもレバレッジ効果を効かせた方がいいのかというとそうではありません。
「逆レバレッジ」に注意
逆レバレッジとは、融資を受けることで収入が下がってしまう状態のことを言います。
例えば、次の条件で不動産投資した場合を見てみましょう。
- 物件価格:3,000万円
- 利回り:0%
- 自己資金:1,000万円
- 借入額:2,000万円
- 借入期間:35年
上記の物件の場合、利回りが4.0%なので、年間収入は3,000万円×4.0%=120万円です。
一方、自己資金1,000万円で1,000万円の物件に投資した場合、利回りが同じ4.0%なら年間収入は1,500万円×4.0%=60万円です。
借り入れして3,000万円の物件に投資するほうが、年間の収入は高くなります。ただし、借り入れした場合は返済額を考慮する必要があります。
それぞれの金利での年間返済額と返済後の収入は次のとおりです。
金利 | 1.5% | 4.0% | 4.5% |
年間返済額 | 734,832円 | 1,062,648円 | 1,135,812円 |
年間収入-返済額 | 465,168円 | 137,352円 | 64,188円 |
借入金利1.5%なら返済後にも約62万円の収入となるので、借り入れしてもメリットがあります。しかし、金利が4.5%になってしまうと返済すると残りが6.5万円と、借り入れしないよりも大きく減少することになるのです。
このように、金利と物件の利回りによっては借り入れがマイナスに働く逆レバレッジとなってしまいます。レバレッジ効果が期待できるのは、金利よりも物件の利回りが高い時に有効です。
つまり、下記のような条件の時にレバレッジ効果が期待できます。
金利<物件利回り
公式があるということは、物件の利回りよりも金利の方が高い場合は、レバレッジ効果が逆に働いてしまう逆レバレッジとなり、リスクを伴うため注意が必要です。
金利<物件利回り=レバレッジ効果あり
金利>物件利回り=逆レバレッジ
上記の公式を頭に入れた上で、計画を立てる必要があります。
レバレッジによる不動産投資のリスク
レバレッジ効果を効かせた場合、収益を最大化することが期待できますが、メリットがある反面リスクも伴います。レバレッジによる不動産投資のリスクにはどんなものがあるのでしょうか。
金利上昇リスク
レバレッジ効果が期待できるのは、金利よりも物件の利回りが高い条件の時です。しかし、金利が上昇してしまうと、この条件は一変してしまうため、返済する金額が増え当初のシミュレーション通りにはいかなくなってしまいます。金利の上昇によるリスクを避けるためには、繰り上げ返済や借り換えなどを検討すると、リスクを抑えることができます。
災害リスク
いつ起こるのか分からない災害リスクも、レバレッジを効かせた時に影響します。それは、物件の価格に比例して、修繕の費用も高くなる傾向があるため、支出が増えてしまうためです。災害リスクを避けるためには、損害保険への加入や、事前に災害が起きにくいエリアを選定するなどの対策が必要です。
空室リスク
レバレッジ効果は、所有している物件が満室の状態でシミュレーションしているので、空室が出てしまうと計画が崩れてしまいます。また、空室の期間が長くなればなるほど、自己資金から持ち出して返済にあてることになるため、退去が決まったら広告を出すなど、空室を出さない対策をしなければいけません。
レバレッジによる不動産投資の5つの失敗例と回避方法
レバレッジを効かせると、てこの原理で利益を最大化できますが、見誤ってしまうと投資の失敗につながります。ここからは、レバレッジによる不動産投資の失敗例と、どうすれば回避できるのかという対策について考えてみます。
失敗例1:相場よりも高い物件を購入してしまう
不動産投資初心者のKさんは、将来性が期待できるエリアのワンルームマンションを購入しました。他の物件よりも少し高めだということは認識していましたが、空室が続くようになり家賃相場を調べてみると、相場よりも高い値段で購入していたことが分かったのです。
相場よりも高い値段で購入してしまったため、売却もできず自己資金から返済しているため貯金が底をついてしまっています。
どうすれば回避できたのか
少ない自己資金でもレバレッジを効かせて高い物件を購入することができますが、高い物件=良い物件とは限りません。周辺の相場確認などの事前確認は入念に行い、不動産投資会社に相談しながら、プロの目線でアドバイスしてもらうようにしましょう。
失敗例2:利回りだけを見て物件を選んだ
レバレッジ効果を期待するあまり、利回りの高さだけを見て物件を選んだのは、あと数年で退職予定のFさんです。金利上昇の影響を受け、想定していた年間の家賃収入が崩れてしまったのです。定年後はゆっくり暮らしながら年金と家賃収入で暮らす予定が、想定外のことが起きて動揺してしまっています。
どうすれば回避できたのか
物件の利回りも大事ですが、金利が上昇してしまうと一気に計画が崩れてしまいます。利回りだけを見て物件を選ぶのは危険なので、ひとつの指標として見るようにしましょう。
そして、レバレッジを効かせるかどうかの判断も重要なポイントになります。不動産投資会社に相談しながら、自己資金と出口戦略を考えた上で、ベストな方法を模索しながら進めていくことが重要です。
失敗例3:年間の家賃収入に重きを置いた
不動産投資で成功している先輩を見て、不動産投資をはじめたWさんは、年間の家賃収入に重きを置いて物件を選びました。選んだのは、家賃が高く若い人に人気があるデザイナーズマンションです。5年ほどは空室にならず入居者が続いていましたが、少しずつ人気が下がり空室が目立つようになります。
デザイナーズマンションは不動の人気という言葉をうのみにしてしまったため、空室を埋めるため広告費がかかり、想定よりも収入が減ってしまいました。
どうすれば回避できたのか
デザイナーズマンションは人気が高い傾向にありますが、入居者が求めるニーズも変わってきます。近隣相場を確認して家賃を見直すなどの措置も必要ですが、レバレッジを効かせて収益を最大化させることだけに重きを置くのは危険です。高望みせず、安定的に入居者のニーズがあるエリアを選ぶなど、物件選びを慎重に行うようにしましょう。
失敗例4:新築のワンルームマンションを購入
不動産投資をするなら、ニーズがあるワンルームマンションと決めていたAさんは、物件選びを慎重に行った上で、新築にこだわりワンルームマンションを選びました。
しかし、最初の入居者が退去してから次の入居者が決まるまで半年も空いてしまったのです。当然年間の家賃収入は激減し、レバレッジを利かせて選んだのに想定した収益が得られずこのまま続けていくべきか悩んでいます。
どうすれば回避できたのか
新築のワンルームマンションは人気がありますが、必ず次の入居者が決まるとは限りません。次の入居者を募集する際は中古物件になってしまうことも考慮し、退去日が決まった時点で次の入居者が見つかるように広告を出すなどの広報活動も必要です。レバレッジ効果の有無に限らず、経営という視点を持ち続けていく意識を持つようにしましょう。
失敗例5:中古アパートで修繕費用が圧迫
自宅の近くに物件を持ち、定期的に出向いて状況を確認したいと考えていたSさんは、中古のアパートを一棟買いしました。何かあればすぐに駆け付けられるので安心ですが、大型の台風が直撃し、築年数が30年を超えるアパートだったので、大きな打撃を受けてしまいます。
修繕が必要な戸数は多く、その分費用は高額になってしまったため、想定外の出費に残りの金額の返済はどうなるのか不安な日々を送っています。また、各住戸の設備の劣化が激しく、毎年のように修繕費用がかかり当初の予定とは全く違うものとなってしまいました。
どうすれば回避できたのか
中古の物件は、メンテナンスの費用がかかることや、アパートの一棟投資は災害が起きた時に支出が多くなってしまいます。これらを回避するためには、保険に加入することと、アパートの規模の選定が必要です。
自己資金とレバレッジ効果を踏まえた上で、どのくらいの物件がベストなのかは判断しにくいものです。相談できる不動産投資会社を見つけて、適宜相談しながら物件を選ぶようにしましょう。
まとめ
不動産投資でレバレッジを効かせるとその分収益を最大化することができますが、空室への対応や、物件を管理するという点も忘れてはいけないポイントです。
不動産投資をする上で明確な目的や達成したい目標があるなら、相談できる不動産管理会社を見つけて、希望を伝えながらアドバイスしてもらい、あなたに合った物件を選ぶお手伝いをしてもらいましょう。
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