不動産投資で法人化するメリット・デメリットと踏み切るべきタイミング
不動産投資で収益が増えるようになると、法人化した方がいいというアドバイスを受けたことがある人も多いのではないでしょうか。
このまま個人で投資を続けていくのか、それとも法人化した方がいいのかは迷う所ですよね。
ここでは、不動産投資で法人化するメリットとデメリット、そして踏み切るタイミングについて解説したいと思います。
目次
Toggle【目次】
■不動産投資における法人化とは
■不動産投資で法人化するメリット
・メリット1:資金調達の選択肢が増える
・メリット2:融資が受けやすくなる
・メリット3:節税効果が期待できる
・メリット4:経費として認められる範囲が広い
・メリット5:相続・贈与時に税金対策ができる
・メリット6:損失の場合繰り越しできる期間が長くなる
■不動産投資で法人化するデメリット
・デメリット1:設立のための時間と費用がかかる
・デメリット2:ランニングコストがかかる
・デメリット3:住民税の支払いが必須となる
・デメリット4:決算の業務に時間がかかる
・デメリット5:副業と判断されて本業に影響がでることも
■不動産投資で法人化すべきタイミング
・最初から法人化する
・途中から法人化する
■不動産投資で法人化をする方法
・法人化に必要なもの
・法人化の手順
■まとめ
不動産投資における法人化とは
個人で管理していたものを法人化することで優遇されるものが多くなります。
具体的にどのようなメリットが得られるのでしょうか。
不動産投資で法人化するメリット
不動産投資で法人化するメリットは6つあります。ひとつずつ見ていきましょう。
・メリット1:資金調達の選択肢が増える
個人で融資を受ける場合、借り入れできる金融機関が限られてしまう他、厳しい審査があります。しかし、法人化すると社会的信用が得られるため、株式の増資や、投資型のクラウドファンディングなど、資金調達をしたい時の選択肢が増えるというメリットがあります。
・メリット2:融資が受けやすくなる
法人で融資を受ける場合、融資可能な上限額が増える他、金利の優遇、そして審査が通りやすくなるという特徴もあります。これは、法人化することにより、社会的な信用が個人よりも高くなるためです。もちろん、法人化してすぐに社会的信用が得られる訳ではありませんので、決算書等の総合判断によるものです。
・メリット3:節税効果が期待できる
個人の場合、所得が高くなればなるほど、税率が高くなるのに対して、法人では法人税率は年々改革が行われ減少傾向です。課税所得が800万円以上の法人税の税率は23.2%、800万円未満の法人については15.0%と定められているため、所得が増えても税率が変わりません。そのため、大きな節税効果が期待できるのです。
参考:財務省
所得が増えれば増えるほど、税金が高くなる個人と、税率が同じ法人とでは、やはり法人化する方を選ぶ人が増えています。
・メリット4:経費として認められる範囲が広い
法人化すると経費として認められる範囲も拡大します。個人で経営している時には、管理費や修繕費などが経費として計上できますが、法人になると、退職金の積み立てや、家族を役員にして役員報酬や給与を支払うことも可能となります。経費として認められる範囲が広がるため、大きな節税効果に繋がるのです。
・メリット5:相続・贈与時に税金対策ができる
個人で投資をしていた場合、投資家が亡くなってしまうと相続や贈与という形で物件の所有者が変わり、相続税や贈与税の対象となってしまいます。しかし、法人の場合、法人を設立した時に法人の所有物になるので、これらの税金は対象になりません。
・メリット6:損失の場合繰り越しできる期間が長くなる
長期的な運用を行う物件では、不測の事態で赤字になる場合もあります。個人で経営している場合、赤字となった場合、損失は3年までしか繰り越せませんが、法人の場合最大9年まで繰越すことが可能となります。そのため、赤字から黒字になった際、繰越して相殺ができるので、節税対策が期待できます。
不動産投資で法人化するデメリット
法人化するメリットがあるということは、当然デメリットも存在します。どのようなものがあるのかひとつずつチェックしていきましょう。
・デメリット1:設立のための時間と費用がかかる
法人設立のためには、さまざまな書類の作成と手続きが必要です。法務局に提出するための定款や登記申請書、就任承諾書などの書類を準備し、公証役場で認証を受けてから法務局へ提出しなければいけません。法人名や所在地、会社の実印や銀行印などやらなければいけないことがたくさんあり、時間と労力、そしてお金がかかってしまいます。
・デメリット2:ランニングコストがかかる
法人化するということは、それだけ投資で利益がでているということなので、会計処理のために税理士に依頼するコストがかかります。もう一人社員を増やすなら人件費もかかりますし、自宅ではなく別の場所に事業所を設置するなら家賃や光熱費もかかるので、個人で管理していた時よりも維持するための費用が発生します。
・デメリット3:住民税の支払いが必須となる
損失の繰り越しができるという反面、赤字になってしまった場合でも法人住民税の支払いが必須となります。拠点を置く自治体や従業員数、そして資本金の金額などによって変わってきますが、平均すると約70,000円前後は、赤字でも必要になるでしょう。
・デメリット4:決算の業務に時間がかかる
個人で確定申告をする場合、年度が1月1日~12月31日までと定められていますが、法人を設立する際、都合の良い月を決算月と決めることができます。この決算月の2ヶ月後までに決算業務の処理をしなければいけません。
個人で申告するのと違って、法人の場合は必要な書類が増える他、金額も大きくなるため、提出する資料の確認を慎重に行う必要があるのです。
・デメリット5:副業と判断されて本業に影響がでることも
法人を設立した場合、代表取締役もしくは役員として登記することになるでしょう。不動産投資をしている人の多くは、本業を持ちながら副業としている人が多く、法人登記されるということは、国税庁に登録され、簡単に検索可能になってしまいます。
勤めている会社に法人化したことが分かり、副業と判断されて、注意を受けたという人もいれば、懲戒処分を受けたという事例も発生しています。何らかの本業を持ちながら法人化を考えているなら、就業規則を確認しておきましょう。
不動産投資で法人化すべきタイミング
不動産投資で法人化するメリットとデメリットについて見てきましたが、
法人化するベストなタイミングはあるのでしょうか。
【最初から法人化する】
最初から法人化するメリットは、上記のメリットでご紹介した以下の6つです。
・資金調達の選択肢が増える
・融資が受けやすくなる
・節税効果が期待できる
・経費として認められる範囲が広い
・相続・贈与時に税金対策ができる
・損失の場合繰り越しできる期間が長くなる
最初から法人化することに躊躇する人もいるかもしれませんが、赤字の繰り越しができるので、繰り越しができる9年の間に黒字化できれば法人化して成功したと言えるでしょう。もちろん、融資が受けやすくなりますし、資金調達の選択肢も広くなります。税金対策ができるというメリットに魅力を感じた人は、思い切って最初から法人を立ち上げて不動産投資をスタートさせてみましょう。
一方で、設立するためには時間と労力がかかりますし、毎月のランニングコストの支払いや、赤字でも住民税の支払いが生じます。決算業務には税理士の力を借りる必要があるので、収益が安定するまでには初期投資費用が多額にかかってしまうというリスクがあります。
【途中から法人化する】
少し様子を見て、収益が安定するようになってからと途中から法人化するという方法もあります。
その目安となるのが、法人税の税率と本業を持っている場合の年収との関係です。課税される所得が900万円以上(税込1,400万円)なら、法人化した方が節税対策になります。途中から法人化するメリットは、不動産投資についてある程度知識が備わり、会社設立や投資経営についてチェックできるためです。本業を持ちながら不動産投資をするなら、不動産投資と会社経営の3つを同時に進めることになるので、手間と労力がかかり本業となる仕事に支障をきたしてしまうかもしれません。また、途中から法人化した場合、個人で所有している物件を会社所有に切り替える手続きが必要になります。
この際、個人から会社へ売却という形を取るため、不動産取得税などの税金が発生してしまいます。最初から法人を立ち上げるか、それとも途中から法人を立ち上げるかは難しい決断になるので、不動産投資会社に相談してデメリットやリスクを最小限にできる方法をアドバイスしてもらいましょう。
不動産投資で法人化をする方法
最後は不動産投資で具体的に法人化する方法についてご紹介したいと思います。
【法人化に必要なもの】
法人化するためには、法務局に提出する書類を準備しなければいけません。準備するものは以下をご覧ください。
1.登記申請書
2.登録免許税納付用台紙
3.定款
4.発起人の決定書
5.設立時取締役の就任承諾書
6.設立時代表取締役の就任承諾書
7.設立時取締役の印鑑証明書
8.印鑑届出書
9.資本金の払込みがあったことを証する書面
10.保存したCD-R
11.会社印
参考:法務局
これらを準備し、法務局に提出する前に公証役場で定款の認証を受けてから法務局に提出します。法務局へ提出した日が設立日になるので、成功を祈願して設立に向いている日取りも大事な決断になります。土日は法務局が休みになるので、平日で可能な日をいくつかピックアップして確定させましょう。
【法人化の手順】
法人化するためには5つのステップがあります。
1.会社の軸となる基本事項を決める
2.必要書類の準備
3.公証役場で定款の認証を行う
4.法務局へ提出
5.印鑑証明書・登記申請証明書を取得する
まずは、会社名や所在地、資本金の額や事業目的を決めます。その後公証役場と法務局へ提出する書類を準備し、定款を作成したら、公証役場で認証してもらいます。資料をまとめ、法務局へ出向き登記申請を行います。最後に印鑑証明書と登記申請証明書を発行してもらったら完了です。会社設立のための書式などは法務局のホームページをご覧ください。
参考:法務局
まとめ
不動産投資で法人化するメリットとデメリットを見てきましたが、最初から法人化するか、それとも途中から法人に切り替えるかは難しい判断になります。どちらもメリットとリスクがあるので、少しでも法人化に興味があるなら株式会社クレドにご相談ください。
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