不動産投資に頭金は必要?フルローンの注意点や少額投資を成功させるポイントなど解説
最近では不動産投資向けの物件でも「頭金不要」と書かれた広告を目にすることが出てきています。確かに頭金を入れることなく不動産を購入することは可能です。しかし、頭金を入れなかったことで後悔するケースも少なくありません。そこで、投資をする前に、頭金を入れるメリットやデメリットはどのようなものなのか、頭金を入れるとすればどのくらい用意しておくと良いのかといった知識を身につけたうえで判断することが大切です。
今回は、不動産投資を成功させるために知っておきたい、頭金が必要かどうか、頭金なしにフルローンを組む際の注意点、少額投資で成功するためのポイント、について解説をします。
目次
Toggle頭金を入れるメリット
まず、頭金を入れるメリットについて見ていきましょう。メリットとしては、以下の3つが挙げられます。
・ローン返済額、利息額を軽減できる
・金利上昇のリスク対策になる
・ローン審査に通りやすい
次項で1つずつ解説していきます。
ローンの返済額、利息額を軽減できる
頭金を入れることで、その分借入額を少なくできます。借入額が少なくなることで、毎月の返済額や利息額を軽減できるというメリットがあるのです。
仮に、3,000万円の物件に投資する場合を見てみましょう。頭金を1,000万円・500万円・0円にした場合、返済額は以下の通りです。
なお、すべて金利2.0%、借入期間35年でシミュレーションしています。
頭金額 |
借入額 |
返済額/毎月 |
返済総額 |
利息総額 |
1,000万円 |
2,000万円 |
66,252円 |
27,825,840円 |
7,825,840円 |
500万円 |
2,500万円 |
82,815円 |
34,782,300円 |
9,782,300円 |
0円 |
3,000万円 |
99,378円 |
41,738,760円 |
11,738,760円 |
頭金を1,000万円入れた場合、毎月の返済額が約6.7万円に対し、頭金0円の場合毎月の返済額は約10万円となります。この物件年間利回りが8%の場合、年間収入は240万円となり月20万円の収入です。
月20万円の収入で返済額が3万円異なるのは大きな差と言えるでしょう。
金利上昇のリスク対策になる
借入額が少ないことは金利上昇リスク対策としても有効です。変動金利を選択した場合、金利が上昇してしまうと返済総額も増えてしまうため、対策しておく必要があります。
例えば、2,000万円を借り入れる場合、金利2.0%と2.5%の返済額を借入期間35年で見てみましょう。
・金利2.0%:返済額66,252円(毎月)/返済総額27,825,840円
・金利2.5%:返済額71,499円(毎月)/返済総額30,029,580円
このように、金利が0.5%上昇すると返済総額が約300万円も変わってきます。
高額で長期に渡る借り入れとなる不動産投資ローンでは、金利上昇の影響は大きくなるものです。借入額が少なければ金利上昇の影響が少ないだけでなく、金利上昇した場合に一括返済や借り換えして対策しやすいというメリットもあります。
ローン審査に通りやすい
頭金を入れることでローン審査に通りやすくなるというメリットもあります。不動産投資ローンでは、借入上限は一般的に年収の8~10倍と言われています。3,000万円借り入れるには、300万円の年収は必要になるものです。
頭金を入れれば借入額が抑えられるため、審査が通りやすくなります。また、頭金を用意できるということは、それまでの資産管理能力や投資への本気度も示せるため審査に有利になるでしょう。
ただし、これはどの投資家にも言えるわけではありません。審査の際は、個人の属性に関する点として、年収や年収の推移、勤務先の評価や勤続年数、借入状況や資産状況が主にみられるポイントです。更に、購入物件の立地や価格、将来的な収益性等の評価も含まれます。融資審査にはさまざまな要素が複合的に絡んでくるので、頭金を入れたから必ずしも希望の融資額が下りるわけではないということを頭に入れておきましょう。
頭金を入れるデメリット
頭金を入れることがデメリットになる場合もあるので注意が必要です。デメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
・不動産投資を始めるのに時間が掛かる
・レバレッジ効果を得にくい
詳しく見ていきましょう。
不動産投資を始めるのに時間がかかる
頭金をある程度用意しようと思えば、その分投資スタートまでに時間がかかってしまいます。気になる物件を見つけても頭金が用意できずに投資できないなど、投資できない期間は機会損失につながるでしょう。理想の物件に出会えたとしても購入できずに逃してしまえば、次にまた同じような条件の物件に出会える保証はありません。
また、投資は早く始めて長期間投資することで資産形成しやすくなるものです。投資スタートが遅れることは最終的な資産にも影響するので注意しましょう。
レバレッジ効果を得にくい
不動産投資の大きな魅力がレバレッジ効果を利かせられるという点です。レバレッジ効果とは、小さい資金で大きな効果を得る「テコの原理」のことを言います。
不動産投資では、自己資金に借り入れをプラスし、自己資金以上の投資ができるというメリットがあります。レバレッジ効果は、借入額が多くなると低くなるため、頭金を多く入れればそれだけレバレッジ効果を得にくくなるのです。
不動産投資に頭金は必要?
契約する金融機関によっては、フルローンといわれる頭金ゼロで諸費用もローンに組み込めるプランを用意しているところもあります。当然の事ながら、すべての物件でフルローンを組むことができるわけではありません。そこで、どのような場合に頭金が必要なのか、どのような場合に頭金がなくても良いのかを見ていきましょう。
・頭金が必要なケース1:希望融資金額に届かない場合
ローンで購入したい物件が決まったらまずは、金融機関に融資の審査を申し込みます。金融機関によって細かなルールは異なりますが、立地条件や周辺環境、築年数などの物件そのものの価値の判断、さらに申込者の年収や年齢など属性といったものが一般的な審査の判断基準となるものです。これらをもとに融資額を決めるのですが、金融機関の審査の結果、一定基準を満たしていなかった場合には希望の融資額を出してもらえないケースもあります。その場合は足りない金額を頭金として自己資金で賄う必要があります。もしも、融資額の不足分の自己資金が用意できない場合には、購入する物件を変えることが一般的です。
・頭金が必要なケース2:融資引き締めのタイミング
金融機関は、その時の世情や政策によって融資を緩和したり引き締めたりする場合があります。金融機関側が融資を渋る「融資引き締めのタイミング」に投資用物件を買おうとしても、希望通りの融資はなかなか受けられません。そこで、融資引き締めのタイミングに融資を受ける場合には頭金の用意が必要になります。頭金を入れることで融資を受ける金額を減らすことができたり、審査の際にプラス評価がされることで融資を受けやすくなったりするのです。金融機関が融資を積極的に進めるのか、融資を渋るのか決めるのかは日本銀行の金融政策によって変わってきます。不動産が供給過多になったり、投資が過熱して不動産価格が高騰したりすると、金融機関の判断によって融資が絞られることが多いです。しかし、不動産投資の知識のない一般時には融資引き締めのタイミングの見極めはなかなかできません。そこで、不動産投資を始める際にはどのような状況下でも融資を受けて投資ができる状態を作るためにも頭金にする自己資金は用意しておくことが望ましいです。
・頭金がなくても良いケース1:金融機関公認の返済能力がある
金融機関は、フルローンの審査にあたり、申込者の返済能力など一定の基準を満たしているかどうかで融資額を判断しています。確認する内容としては幅広く、申込者の年収に対して年間返済額が何割になるかという利率を示す、返済負担率などのチェックや、自動車ローンやクレジットカードのキャッシング枠なども審査の対象となることが多いです。そのため現預金が豊富にある人や年収が高い人は金融機関側から好印象を持たれやすく、経験がなくてもフルローンを組める可能性があります。
・頭金がなくても良いケース2:6か月~1年分の貯蓄がある
金融機関は「お客様に必ずお金を返してもらう」ことを前提条件でお金を貸しています。不動産購入後に手元に貯蓄がゼロに無くなってしまうと、高額の消費が発生した場合や突然の病気など緊急事の出費に備えることができないので貸すことは難しいと判断されがちです。そこで、金融機関側も貯蓄部分は重要視する傾向があります。最低でも頭金を支払った後に100万円は手元にある事が条件としても挙げられます。
頭金の見積もりはどう立てる?
頭金の最適な額は経済状況や購入者の属性、購入物件が新築か中古であるか、物件の立地などの条件によっても左右されます。このように、さまざまな観点から判断が下されるために、明確な規定や計算式はありません。そのため、頭金が何割であれば借りられるという決まりはないのです。しかし、一般的な目安として物件の金額10%〜20%程度という基準と言われています。そこで、頭金を入れる場合は、一般的な目安金額を支払うことを想定しながら、物件購入後に発生する家賃収入とローン返済額、その他必要費のシミュレーションをすることが大切です。シミュレーションをして、毎月の収入と支出を確認していくと、自分が頭金をどのくらい出しておくと良いかが見えてきます。また、万が一数ヶ月の空室が発生した場合、ローン返済を賄える自己資金を手元に残しておいて、残った自己資金を頭金として入れるのも忘れてはいけません。
頭金を入れない場合(フルローン)での不動産投資は現実的?
不動産投資でローンを組む場合、頭金を入れずにフルローンを組むという選択肢があります。ここからは、頭金を入れないフルローンでの不動産投資は現実的なのか、ということを考えていきます。
現実的には難しいケースが多い
フルローンが現実的かについては、フルローンのメリットや注意点はどのようなところなのかを知ることで判断がしやすいでしょう。
【フルローンのメリット】
フルローンのメリットとしては、次の2つを紹介します。
・手元に資金を残せる
・迅速に理想の物件を購入できる
手元に資金を残せる
頭金というのはまとまった金額であるため、支払いが終わると、手持ちのお金は大幅になくなってしまいます。そこで、あえて頭金なしのフルローンを組み、手元に資金を残せるというのはフルローンのメリットの1つです。手持ちの資金に余裕があれば、万が一急な出費があったときにもすぐさま対応できますし、様々な投資を行っているような方の場合には、社会的信用で金融機関から一旦はフルローンで不動産投資を進めながら、手元の現金は他の投資で増やしていく事も可能になります。不動産投資の利回りにもよりますが、社会的信用と現金の両軸で資産形成が出来れば効率化が図れます。
迅速に理想の物件を購入できる
物件は同じものが存在しないいわゆる一点ものです。だからこそ、理想の物件が見つかったらすぐに購入したいですし、万が一逃すと次に同じような物件に出会える保証はありません。そこで、頭金が貯まるまで購入を伸ばすことになると、物件を購入できない可能性が高くなるため、頭金なしでフルローンの利用ができることはとてもありがたいです。フルローンが出来るという事は時間の投資となる訳です。
【フルローンの注意点】
もちろんフルローンには良い面だけでなく注意すべき点もあります。よく理解したうえでフルローンを組むかどうかを判断するようにしましょう。
月々の返済金額が増える
やはりフルローン最大の注意点は、総返済額と総返済利子の金額が大きくなる分、月々の返済額が増えてしまいます。せっかく毎月家賃収入が入るようになっても、ローン返済や建物の維持費が大きくなると赤字になる可能性もゼロではありません。空き家が出たり、未納が出たりすれば、赤字リスクはさらに高まります。いくら自己資金なしで始めたとしても、赤字続きでは「不動産投資で収益を得たい」と考えていた当初の目論見から大きく外れてしまうでしょう。
審査に通りにくくなる
フルローンは申し込む段階で、金融機関の審査が非常に厳しくなるのも難点です。特に勤続年数が長いにもかかわらず頭金が用意できない場合や、年収に対する借入額が大きいというと厳しい判断をされる傾向があります。金融機関としては、リスク軽減のためにも、返済金額が上がるほど審査は厳しくなるのです。
2棟目・3棟目のローンが借りにくくなる
1棟目をフルローンで借り入れしている場合、2棟目・3棟目のローン審査に影響が出る可能性があります。1棟目の投資がうまくいき返済を滞りなくできている場合は、それほど影響はないでしょう。しかし、返済の負担が大きいフルローンで投資がうまくいっていない場合、2棟目以降の審査時に不利になるものです。
また、1棟目で頭金を用意できていないことから2棟目以降の審査も慎重に判断される可能性が高くなります。不動産投資では、2棟・3棟と投資規模を拡大していくことで資産形成を検討している方も多いものです。1棟目の借入状況は2棟目以降に大きく影響するので、注意しましょう。
頭金や自己資金を抑えた少額投資を成功させるポイント
頭金や自己資金を抑えた小額投資でも投資を成功させることは可能です。その際気を付けたい3つのポイントを紹介しますので是非参考にしてみてください。
リサーチを徹底する
どのような投資でもいえることですが、ただプロに任せるだけでなく、自分でも知識を持ち、不動産情報をリサーチすることが大切です。どんなに少額であっても投資には変わりありません。書籍やセミナーなどを通して不動産投資についてよく学び、実際に物件を見に足を運び周りの環境などもリサーチなどして、総合的に検討して投資するかどうかを決断しましょう。
無理のない金額で投資する
投資を始めるとなると、ついつい欲が出てきてしまい大きな利益が出るように、大きな金額を運用したくなりがちです。特に一度利益が出ると、より大きな利益が出るよう投資額を増やしたくなってきます。しかし、投資額が増えればその分のリスクが増えることも忘れてはいけません。貯金すべてを投資してしまうことは危険です。生活資金はしっかりと確保したうえで、余剰分でのみ投資することを心がけましょう。
融資条件をよくする
借入額が高額でも審査に通りやすくするために、融資条件をよくすることが大切です。不動産投資では、個人の属性と投資物件の収益性が審査のポイントとなります。勤務先や年収はすぐに変えることは難しいですが、既にほかの借り入れがある場合は完済していくことなどで対策も可能です。
また、投資する不動産の収益性は重要なポイントとなるので、物件の見極めをしっかりするようにしましょう。立地などをしっかりとリサーチし収益性の高い物件を選ぶことで、融資条件をよくできる可能性があります。
まとめ
不動産投資を成功させるためには、まずは柱となる自分ルールを決めることが大切です。
ほかの人の真似をするだけでなく、年収などの属性と、頭金を用意するのかフルローンにするのかなどの条件から総合的に判断し「自分のスタイルに合った投資の方法は何か」を考えてみましょう。
そうすると、無理のない運用ができ、投資の成功率も高められます。また、できる限りリスクは分散させて失敗の確率を下げることも重要です。リスクを減らすためには、妥協せずに必要な情報を自分でリサーチし、物件を購入する際にも自分に合った不動産会社を選び、利回り以外の情報にも目を向けましょう。
不動産投資初心者の方はまずは本やセミナーなどから知識をつけ、リスクの少ない新築マンション投資からはじめるのもおすすめです。
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