逆オイルショックの到来!
オイルショック(石油危機)といえば、過去の映像等を見た事がある方も多いのではないでしょうか。先ずは、今までのオイルショックとはどのようなものだったのかをおさらいしてみましょう。
目次
Toggle第一次・第二次オイルショック
第一次オイルショックは1973年(昭和48年)に起きました。きっかけは1973年に第四次中東戦争が勃発し、これを受けて原油公示価格を70%程度引き上げた事に始まります。更に1974年にはイスラエル支持国(主にアメリカ合衆国)への経済制裁で原油価格を倍以上にした事が日本経済にも直撃する事になりました。
トイレットペーパーや、洗剤などの原油価格と直接関係のない物資が買えなくなるのではないかと買占め騒動が起きて大変な事態になりました。
省エネルギーへの取り組みも加速し、デパートのエスカレーターの停止やネオンサインの早期消灯、テレビの深夜放送の休止など生活のあらゆる分野に影響を及ぼしました。
今起きているオイルショックとは
第二次オイルショックは1979年のイラン革命により、イランでの石油生産が中止したため、イランから大量の原油を輸入していた日本の需要を直撃しました。
前年の1978年にはOPECが原油価格を4段階に分けて計14.5%値上げする事を決定していたので原油価格が上昇してしまったのです。しかし、第一次オイルショックを経験していた日本は、同じように省エネルギーへの取り組みを実施し、日銀もいち早く金融引き締めを行ない、景気の落ち込みは第一次オイルショック程にはならず軽微な影響の内に終息しました。
この2回のオイルショックにより、先進国の経済そのものが中東の石油資源に依存していることが明白となり、原子力や風力、太陽光など非石油エネルギーの効率を改善させる大きなきっかけにもなりました。
以上のように、今までのオイルショックというのは原油価格の上昇により世界的な景気後退が起こっていましたが、今起こっている原油問題はいったいどの様な事態になっているのでしょうか。
原油価格の目安としてWTI原油先物価格が大きな基準になりますが、2020年初めでは1バレル(約159L)60ドルほどで取引がされていましたが、2020年3月に入ると急落して一時は1バレル20ドル付近まで下落をしてしまいました。
ここで皆さん疑問が生じますよね。原油が安くなるってことはガソリン価格が下がり、企業の製品制作の燃料代等も下がるから目先としては景気が好転するのではないのかと考える方もいらっしゃるでしょう。
確かに、目先で我々が享受できるメリットしてはその通りなのですが、原油が下がりすぎる事への世界経済の悪化に目を向けなければなりません。
■なぜ原油価格が下がってしまったのか
この原油価格の下落に関しての発端としてはコロナウィルスが大きく影響をしています。2020年2月頃から中国を初めとする工場生産がストップして原油使用量が激減しました。また、入国規制や都市封鎖等も影響し、飛行機が飛び辛い状況がさらに拍車をかけてしまいました。
すると、原油の産出量を減らして価格を上げるという手段を取りますが、3月6日の原油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成する「OPECプラス」の協議が決裂してしまいました。サウジアラビアが提案をした日量150万バレルの追加減産案をロシアが拒否したのです。それに怒ったサウジアラビアが現行の日量約970万バレルから4月からは1000万バレルを超える水準まで増産し、日量1200万バレルまで増やすこともできると非公式なコメントもあったそうです。
それに伴い、WTI原油先物チャートも1バレル40ドル近くまで下落し、その後も下落を続けてしまったという流れです。
週明け9日の東京市場では日経平均株価が1,000円以上の急落になり、ニューヨーク市場でもダウ工業株30種平均が2,000ドルを超える大暴落になってしまいました。そこで、原油価格の下落が株価の下落となぜ連動するのかという疑問が生じます。
■株価と原油価格のつながりとは
当然の事ながら理由はいくつも考えられますが、大きな理由としては原油を産出する企業経営の先行きへの不安です。その中でも、米国シェールオイルの発掘業者へ対してです。シェール業者の採算ラインは1バレル40~50ドルといわれています。
2006年以降の技術革新により、北米を中心に開発ブームとなると同時に社債等を大量に発行もしていますが、損益分岐点を大きく下回っている現状では採掘もままなりません。
また、原油安に連動して起こる事は、原油産油国が産出費用を補うために株式を売却するというシナリオです。
国際通貨基金(IMF )によれば、国の財政収支が均衡する原油価格ではサウジアラビアが1バレル83ドル台で、ロシアが予算で設定した基準は1バレル42ドル台なので、現在の1バレル20ドル台ではほとんどの主要産油国が財政を賄えなくなってしまいます。
GDPの大部分を占めるサウジアラビアではかなり深刻な状況となります。
その為、オイルマネーが株式市場から資金を引き揚げるのではないかという不安により株価下落も連動するのです。
さいごに
この様に、目先だけではガソリン価格の引き下げ等により恩恵を受ける方々が居る一方で、様々な連鎖により世界景気が恐慌に陥る可能性も出てきます。
世界経済の悪化により、ガソリン代が安くなったからといっても仕事がなくなり工場がストップしてしまえば経済が回らず、ドライブにも行けなくなるので何の意味もありません。ましてや、新型コロナウィルスの広がりにより世界的に自粛を余儀なくされる中、更に原油下落の影響で同時多発の状況下に直面しているのです。一般的には世界の景気が良いときには原油が多量に使われるのです。今の状態が続く事は日本だけではなく世界的に景気が後退してしまう状況に陥りますので長引くことは決して良い事ではないのです。
一刻も早くコロナウィルスが沈静化され、世界景気が循環するような状況になる事を願います。
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