暮らしを支援する制度が続々。コロナ禍における「住居系」の給付・助成制度とは?
2020年に入り、世界を脅かしている、新型コロナウイルス。日本では4月から5月にかけて緊急事態宣言を発令するなど、全国的に対策を講じたのはご存じの通りです。ただし、その後は一時的に感染者の数は減ったものの、7月以降は急増に一転することに。累計の感染者数は3万人を超えました(7月30日時点)。
こうした状況に対して、国や自治体は様々な支援策を行っています。とりわけ、個人や事業者の住まいや事業所を守る制度は、幅広く実施されているようです。ここでは、コロナ禍における、こうした支援策を取り上げます。
目次
Toggle家賃相当額を支援する「住居確保給付金」
新型コロナによる休業や営業自粛などが影響し、収入が減った人は少なくありません。東京商工リサーチの調べによると、今年2月から7月29日までに新型コロナ関連で経営破綻(負債1000万円以上)した企業の数は、累計で362件。そのうち、東京は91件と最も多く、次いで大阪(33件)、北海道(21件)と続きます。業種別では飲食(55件)が最多で、アパレル関連(44件)、宿泊業(40件)が上位を占めました。いずれにしろ、休業や営業自粛による利用者減が響いているようです。経営・勤務先の倒産は免れたとしても、業績悪化で減給したケースもあるでしょう。
そうしたなか、新型コロナにより収入が激減し、住まいを失う恐れのある人に対する支援が、「住居確保給付金」です。要件を満たせば、市区町村ごとに定める額(生活保護制度の住宅扶助額)を上限に実際の家賃額を原則3カ月(延長2回まで最大9カ月間)支給します。対象要件は以下の通りです。
- 主たる生計維持者が離職・廃業後2年以内である場合 もしくは個人の責任・都合によらず給与等を得る機会が、離職・廃業と同程度まで減少している場合
- 直近の月の世帯収入合計額が、市町村民税の均等割が非課税となる額の1/12(以下「基準額」という。)と、家賃(但し、上限あり)の合計額を超えていないこと
- 現在の世帯の預貯金合計額が各市区町村で定める額を超えていないこと
- 誠実かつ熱心に求職活動を行うこと
支給額は居住する市区町村や世帯人数により異なりますが、世帯収入額が基準以下の場合は家賃額(住宅扶助額が上限)、基準額を超える場合は「基準額+家賃額-世帯収入額(住宅扶助額が上限)」と定められています。例えば東京都特別区の場合、世帯人数が1人なら月額5万3700円、2人なら6万4000円、3人なら6万9800円が上限です。
手続きは、申請者が生活困窮者自立支援機関(自治体が直営もしくは社会福祉法人やNPOに委託)に相談・申請を行い、審査に取れば自治体が賃貸人などに支給するという流れ。申請時には本人確認書類、収入が確認できる書類、預貯金額が確認できる書類、離職・廃業や就労日数・就労機会の減少が確認できる書類が必要です(申請先にとり異なる場合がある)。
売上が下がった事業者の家賃負担を軽減する「家賃支援給付金」
家賃支援給付金は、コロナ禍による緊急事態宣言の延長などにより、売上減になった事業者の事業継続をした支えするため、地代・家賃(賃料)の負担を軽減する制度です。法人で最大600万円、フリーランスを含む個人事業者に最大300万円が一括で支給されます。支給対象は次の通りです。
- 資本金10億円未満の中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者(※医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人も幅広く対象)
- 5月~12月の売上高が、「1カ月で前年同月比50%以上減」または「連続する3カ月の合計で前年同期比30%以上減
- みずからの事業のために占有する土地・建物の賃料を支払い
支給額は法人の場合、賃料が月75万円までだと支払い賃料の3分の2、給付額の上限は月50万円×6カ月で最大300万円。月75万円を超えると、「50万円+[支払い賃料の75万円の超過分×3分の1]」となります。ただし、月100万円が上限なので、最大は×6カ月で合計600万円となります。
個人事業者の場合は、賃料が月37万5000円までの給付額は支払い賃料の3分の2で、上限は月25万円×6カ月で最大150万円。月37万5000を超えると、「25万円+[支払い賃料の37万5000円の超過分×3分の1]」となり、給付額は月上限50万円×6カ月で最大300万円となります。
なお、同制度の申請期間は2021年1月15日の24時まで。これまでに申請受付が終わらないと支給の対象になりません。また、原則としてポータルサイトで受け付けていて、自身で電子申請が困難な場合は、補助員が入力をサポートする「申請サポート会場」に足を運ぶ必要があります。
申請の流れは、ポータルサイトで手続き用のログインIDとパスワードを登録することから始まり、これが終わるとマイページから各種情報を入力、必要書類を添付すれば終わりです。以降、事務局で申請内容を確認し(不備がある場合はメールとマイページへ通知され修正)、給付通知書が発送の上、登録口座に入金されます。
申請にあたっては以下の書類をスキャン・撮影してアップロードしないといけません。
■ 法人の場合
1.宣誓項目
①自署の誓約書
2.売上に関する書類
①2019年分の確定申告書別表一の控え
②法人事業概況説明書の控え
③受信通知(※e-Taxにて申告をおこなっている場合のみ)
④申請にもちいる売上が減った月・期間の売上台帳など
3.賃貸借契約に関する書類
①賃貸借契約書の写し
②直前3か月間の賃料の支払い実績を証明する書類
4.口座情報に関する書類
①給付金の振込先がわかる口座情報
■ 個人事業者の場合
1.宣誓項目
①自署の誓約書
2.売上に関する書類
①確定申告書第一表の控え
②所得税青色申告決算書の控え(※月別売上の記入のある2019年分の控えお持ちの方)
③受信通知(※e-Taxにて申告をおこなっている場合のみ)
④申請にもちいる売上が減った月・期間の売上台帳など
3.賃貸借契約に関する書類
①賃貸借契約書の写し
②直前3か月間の賃料の支払い実績を証明する書類
4.口座情報に関する書類
①給付金の振込先がわかる口座情報
5.本人確認に関する書類
①本人確認書類の写し
特徴的なのは、自著の誓約書でしょうか。ポータルサイトにあるフォーマットをダウンロードの上、代表者が署名して添付する必要があります。また、各書類については原則と異なる場合もあるようです。サイトには「例外」が記してあるので、支給対象になるかどうかわからない方は、チェックすると良いでしょう。
このように、賃料などに困る個人や事業者に対して、国は支援策を用意しています。自身が賃貸に住んでいたり、テナント事業者であるなら制度はしっかりと活用したいもの。あるいは、住居や店舗物件を持つ賃貸事業者であるなら、入居者に対してアナウンスしたいものです。
自治体独自の住宅支援策もたくさん
支援策を講じるのは国だけではありません。全国各地の自治体でも、さまざまなことを実施しています。例えば、東京都や横浜市、大阪市などは公営住宅を一時的に提供するといった支援を行いました。さらに、東京都港区は、物件オーナーが賃料を減額した際にその一部を助成する「オーナー向けテナント賃料支援事業」を実施、茨城県高萩市は市内に事業所を持つ小規模事業者・個人事業者が要件を満たすと、家賃などの補填に使える「たかはぎ小規模企業者・個人事業主応援補助金」を発表しています。こうした、事業者向けに自治体が提供する支援策は多く、経営者の方は一度、窓口に問い合わせてみることです。
もちろん、家賃に対する助成や給付だけではなく、国民1人当たり10万円が給付された「特別定額給付金」や、休業中に賃金が支払われない中小企業従業員に対する「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金」、売上が半分以下に下が事業の継続が苦しい中小法人などに対する「持続化給付金」、雇用を維持する中小企業をサポートする「雇用調整助成金」など、個人や法人が利用できる制度は、たくさん用意されています。「入金まで時間がかかる」「手続きが煩雑」など、様々な意見はあるようですが、該当するものはうまく使っていきましょう。
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