不動産投資家が注意すべき瑕疵担保責任とは?民法の改正内容を徹底解説
不動産投資家であれば、瑕疵担保責任について知っておくことが重要です。というのも、瑕疵担保責任は、売主が瑕疵(欠陥)に対して負う責任であり、金銭的なリスクが大きい責任だからです。
そこで、この記事では、瑕疵担保責任の概要や不動産投資家が具体的に注意すべき点、および民法改正によって何が変わったのか?という点について解説します。
瑕疵担保責任は、買主も売主も関係するので、物件購入を検討している不動産投資家も、売却を検討している不動産投資家も参考にしてください。
目次
Toggle瑕疵担保責任とは売主が負う責任
冒頭のように、瑕疵担保責任は売主が瑕疵(欠陥)に対して負う責任です。まずは、瑕疵担保責任の具体例と判例を解説するので、瑕疵担保責任の概要とリスクを知っておきましょう。
○瑕疵担保責任の具体例
瑕疵担保責任の「瑕疵(欠陥)」は、具体的にいうと以下のことです。
・雨漏りがする
・シロアリ被害がある
・土壌汚染がある
・居住するのに支障が出るほど損傷がある
・給排水管の故障
仮に、マンションの売買契約を結び、無事に引き渡したとします。しかし、引渡し後に「収納の壁に亀裂があり雨が浸水している」という、建物の瑕疵が見つかったとしましょう。
もし、この瑕疵が売主の責任と認められれば、売主は「瑕疵担保責任あり」となり、買主から補修費用や損害賠償請求をされるというわけです。つまり、売主は物件を引き渡した後も、建物に関して一定期間は責任を負うということです。
瑕疵担保責任の期間は売主・買主合意の元で決めますが、一般的には3か月から1年程度になります。なお、瑕疵担保責任は賃貸中の投資物件であっても同じです。
○瑕疵担保責任を問われた判例
では、実際に瑕疵担保責任が追及されて、損害賠償請求をされた判例を見てみましょう。この判例は2012年に起こった裁判の判例であり、概要は以下の通りです。
・中古マンションを購入したが引渡し後に水漏れが発覚
・買主が売主と仲介業者を説明義務違反で訴える
・損害賠償の一部が認められ407万円の支払い命令
この判例で支払い命令が出された最も大きな理由は、「過去に水漏れしたことがある」という事実を、売主が隠していたからです。それによって、瑕疵担保責任が売主にあるとされ、補修費用や慰謝料などの支払い命令が下されました。
このように、実際に瑕疵担保責任が追及されて支払い命令に至った判例は少なくないので、投資物件の売買時は瑕疵担保責任について知っておく必要があります。
民法改正による瑕疵担保責任の変更点
また、不動産投資家は民法改正による瑕疵担保責任の変更点も知っておいた方が良いです。具体的には、以下の点を知っておきましょう。
・瑕疵の範囲が変更した
・損害範囲が変更した
・対抗措置が変更した
民法改正によって買主保護の側面が強くなったので、物件売却を検討している不動産投資家は注意が必要です。
なお、民法改正に伴い瑕疵担保責任は「契約不適合責任」と名称が変わりますが、本記事では「瑕疵担保責任」と表記します。
○買主は代金減額請求ができる
まず、民法改正により買主は代金減額請求ができるようになりました。今までは補修費用か損害賠償請求(慰謝料含む)だけだったので、代金減額請求できることによって、買主が売主に請求するハードルが下がったといえます。
また、代金減額請求時の金額算定方法は定められていません。そのため、フェアな金額になるように、売買契約書に算定基準を設けた方が良いでしょう。
○損害範囲の変更
民法改正によって、損害範囲は以下のように変わりました。
・旧:信頼利益のみ
・新:履行利益が追加
信頼利益とは「瑕疵を知らなかったことで買主が受けた損失」のことで、履行利益とは「本来履行されていれば得られた利益」のことです。
たとえば、引渡し後に雨漏りが発覚し、それによって家具が損傷したとします。先ほどの判例でも分かるように、補修費用以外の慰謝料請求もできます。
しかし、民法改正後は明確に履行利益が追加されたので、「雨漏りによって損傷した家具の費用」として請求しやすくなったというわけです。不動産投資家の立場としては、物件売却時に一層瑕疵には注意しなければいけません。
○瑕疵担保責任が該当する期間
次に瑕疵の範囲も以下のように変わります。
・旧:契約履行時までの瑕疵
・新:引き渡しまでの瑕疵
このように、売主が責任を負う瑕疵が引渡しまでの瑕疵になりました。つまり、売主が負う瑕疵担保責任の負担が大きくなったということなので、前項と同じく物件売却時の瑕疵には注意する必要があります。
不動産投資家がリスクヘッジすべきこと
ここまでで、瑕疵担保責任の概要と、民法改正によって買主保護の側面が強くなったことが分かりました。その点を踏まえ、不動産投資家がやるべき以下について解説します。なお、これらは売主も買主もどちらも当てはまります。
1.物件状況確認書を細かく作る
2.ホームインスペクションの実施を検討する
3.瑕疵担保責任の免責は避ける
上記1,2は賃借人がいない状態でしか実施できないので、空室時の売買、もしくは新築物件の売買時の対策と思っておきましょう。
○物件状況確認書を細かく作る
物件状況確認書とは、各部位の損傷や不備などを記した書類です。たとえば、リビング・ダイニングの「壁」という項目があり、壁に関して以下の状況をチェックし記載します。
・クロスに破れや損傷はないか
・クロスに汚れはないか
・コンクリートや軽鉄に損傷はないか
物件状況確認書は規定のフォーマットがないので、仲介を担当する不動産会社によって内容は異なります。極めてシンプルな書類もありますが、瑕疵担保に関するリスクヘッジをするなら細かく記載してあるフォーマットが理想です。
そのため、売主の立場から不動産会社に、細かく記せるような物件状況確認書を用意するよう依頼しましょう。また、買主は物件確認時に室内の細かいところもしっかりチェックしておき、何か気になる点があれば不動産会社に指摘することが重要です。
○ホームインスペクションの実施を検討する
また、売主・買主ともに瑕疵が心配であれば、ホームインスペクションの実施をおすすめします。ホームインスペクションとは、物件に不備がないか専門家がチェックすることです。専門家が目視を中心に室内をチェックしてくれるので、事前に瑕疵を発見できる可能性が高まります。
ホームインスペクションの実施は、売主だけでなく買主も希望することが可能ですが、ホームインスペクションには5万円前後の費用がかかる点は認識しておきましょう。
○瑕疵担保責任の免責は避ける
次は、瑕疵担保責任の免責は避けるという点であり、これは買主が行うリスクヘッジです。瑕疵担保責任の免責とは、「売主が瑕疵担保責任を負わない」という意味で、実は特約として明記できます。
しかし、瑕疵担保責任の免責は買主のリスクが大きいので、提案されても基本的には避けた方が良いでしょう。買主は、一般的な瑕疵担保責任の期間である3か月~1年程度を目安に、不動産会社に希望の期間を伝えておきましょう。
まとめ
このように瑕疵担保責任は、場合によっては売主が大きな金銭的リスクを負います。また、当然ながら買主も瑕疵がある物件を取得したくないです。そのため、上述した瑕疵担保責任の概要をしっかり理解し、ホームインスペクションなどの対策を頭に入れておくと良いでしょう。
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