不動産投資の消費税還付とは?還付が受けられなくなった理由なども解説
不動産投資は物件購入時に多額の消費税がかかるため、「消費税を抑える方法はないか」と考えた人もいるのではないでしょうか?実は以前は消費税還付と呼ばれる制度で払った消費税を返還してもらえました。しかし近年の税制改正で原則として不動産投資で消費税還付は受けられなくなってしまいました。
今回は消費税還付とはどんな制度かについてや不動産投資で消費税還付が受けられなくなった理由などをわかりやすく解説します。また消費税還付以外の節税効果についても紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
Toggle消費税還付とは
消費税は物やサービスを消費者が購入する際に発生する税金のことです。事業者は消費者の消費税を一旦預かり、納税する義務があるのですが、各取引段階で税金が二重、三重に積み重ならないように受け取った消費税から払った税金を差し引いて納税を行います。
しかし、場合によっては払った税額よりも、受け取った税額が少ない場合もあります。その際に払い過ぎた消費税を返還(還付)してもらう制度が消費税還付です。
計算式を簡単に表現すると以下のようになります。
「事業者が納税する消費税」=「取引で受け取った消費税」―「取引で支払った消費税」
※ただし支払った消費税が受け取った消費税を上回る場合は消費税還付される
例えば支払った消費税が50万円で受け取った消費税が45万円だった場合、5万円の消費税が還付されます。
不動産投資に課税される消費税とは
消費税還付を考える前に、まずは不動産投資でかかる消費税についてどんなものがあるのかを見てみましょう。
不動産投資には下記の内容に消費税が課せられます。
<取引で受け取る消費税>
- 店舗や事務所の家賃
- 入居者から徴収している水道光熱費
- 駐車場費用(駐車場として整備されている場合のみ)
- 退去時の原状回復費用(修繕費用)
<取引で支払う消費税>
- 建物の購入
ここでのポイントは以下の通りです。
- 受け取る消費税には家賃収入が含まれない
- 支払う消費税には土地の購入が含まれない
上記を踏まえた上で不動産投資の消費税還付について、詳細を見てみましょう。
不動産投資では消費税還付が原則受けられない
不動産投資は投資家が物件を提供し、入居希望者が部屋を借りるといったサービスを提供する事業です。そのため一見、消費税還付を受けられるチャンスがあると感じてしまいます。しかし実はアパートやマンションなどを賃貸として貸付ける、一般的な不動産投資は消費税還付が原則受けられません。
なぜ不動産投資で消費税還付が受けられないのかについて次の見出しで解説します。
不動産投資で消費税還付が受けられない理由
不動産投資で消費税還付が受けられない理由は主に以下の3点が挙げられます。
- 家賃収入が非課税売上げのため
- 不動産オーナーの多くは免税事業者のため
- 住宅の仕入れ税額控除が消費税還付不可になったため
それぞれの内容について、詳しくみてみましょう。
家賃収入が非課税売上げのため
先に述べたように不動産投資における住宅の貸付けによる家賃収入には原則消費税が課されません。貸付期間が一ヶ月に満たない場合は課税される例外はありますが、あくまでイレギュラーなケースのため、家賃収入は消費税非課税といった認識で問題ないでしょう。
また単純な家賃に加え、共益費や管理費、修繕積立金なども非課税です。
不動産オーナーの多くは免税事業者のため
消費税還付を受けるためには課税事業者になる必要があります。課税事業者になるための条件は前々年度の課税売上額1,000万円を超えていることです。
先に述べたようにアパートやマンションなどの住宅で家賃収入を得る不動産投資に関しては、家賃収入自体が非課税となります。結果、課税売上げが発生しないため、不動産オーナーは免税事業者であるケースがほとんどなのです。
住宅の仕入れ税額控除が消費税還付不可になったため
先述した理由に加え、最も根本的な理由に令和2年に施行された税制改正があります。
これまで税制度の抜け道を使って、アパートやマンションでも消費税還付を行えていました。しかし、令和2年の税制改正によって、住宅における仕入れ税額控除が認められなくなってしまいました。これにより現在はアパートやマンションなどの賃貸経営での消費税還付が全面的に利用不可になっています。
自動販売機スキームや金地金売買スキームは利用不可に
税制の抜け道を利用したスキームの中でも有名なのが、自動販売機スキームと金地金売買スキームです。
それぞれのスキームについて簡単に説明すると、マンションの敷地に自動販売機を置いて、飲み物を販売したり、金の売買を繰り返したりして、強制的に課税売上げを作り出す方法です。
しかし、これらのスキームも令和2年に施行された税制改正によって利用できなくなりました。
不動産投資で消費税還付を受ける方法
不動産投資では原則消費税還付が受けられないと説明してきました。ただし、原則ということは例外も、もちろん存在します。
ここからは不動産投資で消費税還付を受ける方法について解説します。具体的な方法は以下の通りです。
- 事業用の賃貸物件で投資を行う
- 課税事業者になる
それぞれの詳細を解説します。
事業用の賃貸物件で投資を行う
賃料収入が非課税なのは住宅の貸付けを行う場合です。店舗やオフィスなどの事業用不動産の貸付けで得た賃料収入は消費税が課されます。
消費税還付には課税売上げの割合が著しく減少した場合、調整が入り、一部の還付金が没収されるケースがあります。
住宅の貸付けで消費税還付を受ける際は家賃収入が非課税のため、課税売上げの割合が変動しやすいのですが、事業用不動産は家賃収入が課税なので、課税割合に大きな変動はありません。
課税事業者になる
消費税還付を受けるためには課税事業者になる必要があります。
課税事業者になるためには、以下の方法があります。
- 個人事業主の前年上半期の課税売上高が1,000万円超
- 法人の前年度の期首から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円超
- 消費税課税事業者選択届出手続を行う
- 資本金1,000万円以上の新規設立法人や特定新規設立法人
不動産投資で消費税還付を受けるには初年度に課税事業者になる必要があるので、物件を購入した年に消費税課税事業者選択届出手続を行って課税事業者になりましょう。
消費税還付以外の税制優遇
アパートやマンションの賃貸経営では消費税還付は受けられなくなりました。しかし不動産投資には、ほかにも節税効果が得られます。
節税が期待できる税金は以下の4種類です。
税金の種類 | 内容 |
所得税 | 損益通算で税金を軽減できる |
住民税 | |
相続税 | 不動産の方が現金よりも低い相続税、贈与税にできる |
贈与税 | |
法人税 | 所得税、住民税同様に損益通算で税金を軽減できる |
上記のように不動産投資は消費税以外にも節税効果が期待できます。消費税還付だけにとらわれず、総合的に節税メリットを判断すると良いでしょう。
まとめ
アパートやマンションなど、住宅の不動産投資の場合、消費税還付は原則として受けられません。抜け道として有名な自動販売機スキームや金地金売買スキームといった方法も現在は利用不可です。消費税還付を受けるならば、課税事業者になってオフィスビルやテナントの不動産投資を行うと良いでしょう。
しかし、不動産投資における節税効果は消費税だけではありません。そのほかの節税効果を含め、総合的に判断すると良いでしょう。
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