不動産投資のフルローンは危険?フルローンに有利な条件や注意点を解説
不動産投資の入り口である物件購入ですが、資金調達について悩む方も多いのではないでしょうか。不動産投資は、唯一、金融機関から融資を受けてはじめられる投資です。購入価格の一部のみローンを組むのはもちろん「フルローン」にする選択肢もあります。
しかし、フルローンについては「危険」や「後悔」といったネガティブな声が多いのが現状です。そこで本記事では、不動産投資におけるフルローンのリスクや注意点を解説します。フルローンを組んでもよい人や審査に有利な条件も紹介するので、フルローンを検討する際の判断材料として、参考にしてください。
目次
Toggle不動産投資のフルローンとは
フルローンとは、購入する投資物件の価格と同額の融資を受けることです。たとえば2,000万円で売りに出ている物件を購入するために、2,000万円のローンを組むことを意味します。
ただし、物件を購入するのにかかる費用は、物件価格だけではありません。物件を紹介してもらった際の仲介手数料や、登記を変更する際の登録免許税など、さまざまな諸費用がかかります。
フルローンは、あくまでも物件価格と同額の融資のため、基本的に諸費用は融資額に含まれません。フルローンを組めれば、大幅に初期費用を抑えられますが、自己資金0円で不動産投資ができるわけでないため注意しましょう。
フルローンで不動産投資するメリット
フルローンを組んで不動産投資するメリットは以下2点です。
- 手元に資金を残せる
- 迅速に理想の物件を購入できる
詳しくみていきましょう。
手元に資金を残せる
頭金というのはまとまった金額であるため、支払いが終わると、手持ちのお金は大幅になくなってしまいます。そこで、あえて頭金なしのフルローンを組み、手元に資金を残せるというのはフルローンのメリットの1つです。
手持ちの資金に余裕があれば、万が一急な出費があったときにもすぐさま対応できますし、様々な投資を行っているような方の場合には、社会的信用で金融機関から一旦はフルローンで不動産投資を進めながら、手元の現金は他の投資で増やしていく事も可能になります。
不動産投資の利回りにもよりますが、社会的信用と現金の両軸で資産形成が出来れば効率化が図れます。
迅速に理想の物件を購入できる
物件は同じものが存在しないいわゆる一点ものです。だからこそ、理想の物件が見つかったらすぐに購入したいですし、万が一逃すと次に同じような物件に出会える保証はありません。
そこで、頭金が貯まるまで購入を伸ばすことになると、物件を購入できない可能性が高くなるため、頭金なしでフルローンの利用ができることはとてもありがたいです。フルローンが出来るという事は時間の投資となる訳です。
不動産投資におけるフルローンのリスクと注意点は5つ
メリットの大きいフルローンですが、当然、注意すべき点もあります。フルローンを組んで不動産投資を始めるリスクと注意点は以下5つです。
- 諸費用は融資額に含まれない
- キャッシュフローが悪化する
- 金利上昇に大きく影響をうける
- 金融機関の融資審査に通りにくい
- 売却しにくい
ひとつずつみていきましょう。
(1)諸費用は融資額に含まれない
前述しましたが、基本はフルローンに諸費用は含まれません。一般的な諸費用は、新築で物件価格の3~7%、中古で6~10%といわれています。諸費用はおもに以下の内容です。
- 仲介手数料
- 印紙税
- 登録免許税
- 不動産取得税
- 司法書士手数料
- 融資保証料
- 融資事務手数料
- 火災保険料
- 地震保険料
- 固定資産税
ただし、金融機関によっては、手付金10万円だけ用意して、諸費用込みでローンを組めることもあります。諸費用込みのフルローンについて気になる方は、まずは金融機関に相談してみましょう。
(2)キャッシュフローが悪化する
フルローンにより、借入額が増えれば返済額も増えます。家賃収入がはいっても大部分がローンの返済に充てられ、手元の資金(キャッシュフロー)を思うように増やせません。
3,000万円の投資物件を購入するケースで比較した、以下の表をご覧ください。
頭金額 | 借入額 | 返済額/毎月 | 返済総額 |
1,000万円 | 2,000万円 | 66,252円 | 27,825,840円 |
500万円 | 2,500万円 | 82,815円 | 34,782,300円 |
0円(フルローン) | 3,000万円 | 99,378円 | 41,738,760円 |
※すべて金利は2%、借入期間は35年間でシミュレーションしています。
上記の表で、頭金1,000万円とフルローンを比較すると、毎月の返済額は、3万円以上の差があることがわかります。
仮に、この物件の年間利回りが5%の場合、家賃収入は年間150万円、月125,000円です。
フルローンの場合、毎月25,000円ほどしか手元に残りません。借入額が多いほど、キャッシュフローは悪化してしまうのです。
(3)金利上昇に大きく影響をうける
フルローンで借入額が増えると、利息も増額し、金利上昇の影響を大きくうけることになります。35年の返済期間で2,000万円と3,000万円の融資を受けたときの、金利による返済総額の違いをみてみましょう。下記の表をご覧ください。
借入額/金利 | 2% | 2.5% | 総返済額の差額 |
2,000万円 | 27,825,840円 | 30,029,580円 | 2,203,740円 |
3,000万円 | 41,738,760円 | 45,044,160円 | 3,305,400円 |
金利が0.5%上がると、2,000万円の融資を受けた場合は約220万円、3,000万円の場合は、約330万円、総返済額が増えます。
融資額2000万円と3000万円で比較すると、融資額の多い3,000万円のほうが、金利上昇時の返済額の差が大きいです。以上のことから、借入額が多いほど、金利上昇の影響が大きいことがわかります。
(4)金融機関の融資審査に通りにくい
金融機関にとっては、融資額が多いほど「完済してもらえない」リスクが高まります。そのため、個人の年収や資産状況などの属性が厳しくチェックされるのです。物件購入価格にもよりますが、高額な物件ほど、フルローンを組むための審査は通りにくくなります。
また融資審査に通りにくいことから、容易にローンの借り換えができないことも注意すべきポイントです。
(5)売却しにくい
基本的に、ローンを完済しないと物件は売却できません。売却益でローンを完済できればよいですが、フルローンで返済額が大きいと、売却益では全額賄えない可能性があります。
不動産は所有しているだけで税金や管理費がかかるため、ローンを完済できなくても物件を手放したい場合は、任意売却し返済を続けることになってしまうのです。容易に手放せないため、フルローンによる不動産投資は、慎重に検討しましょう。
不動産投資でフルローンのリスクを軽減できる人
注意点の多い不動産投資ですが、下記に当てはまる方は、フルローンで不動産投資するリスクを軽減できます。
- 資金力のある人
- 低金利で融資を受けられる人
順に詳しく解説します。
(1)資金力のある人
「年収が高い」「金融資産をもっている」など、資金面で余裕をもって運用できる人は、フルローンによるリスクを軽減できます。
不動産投資は、空室が長引けば家賃収入は得られません。また想定外の修繕や金利上昇などのリスクもあります。フルローンを組むには、計画通りに収入が得られなかったり予期せぬ出費があったりしても、家計を圧迫せずに、ローンを返済していけるほどの資金力が必要です。
(2)低金利で融資を受けられる人
借入額が多くなりやすいフルローンは、どうしても利息が高くなってしまいます。日頃から取引があるなどの理由で、銀行から低金利で融資を受けられる伝手があれば、金利が高くなるリスクを軽減可能です。
ただし、どんなに金利を低くできても、融資額が少ないほどキャッシュフローは増やせます。「資金を用意できないからフルローンにする」のではなく、手元に残した資金で別の投資をするなど、戦略的思考でフルローンを検討しましょう。
不動産投資でフルローンの審査に有利な条件
フルローンを組むには、ローン審査を通過することが不可欠です。ここでは、フルローンの審査に有利な条件4つ紹介します。
- 年収や金融資産が多い
- 購入する不動産の評価が高い
- 共同担保できる物件がある
- 不動産投資の実績がある
順に詳細を解説します。
(1)年収や金融資産が多い
フルローンの審査に通るためには、個人の属性が重要です。融資金額に対して、年収や金融資産が充分にあれば審査に通りやすいといえます。
金融資産の保有状況によりますが、融資を受けられる金額の目安は、年収の10~15倍です。さらに、基準となる年収を維持していること条件になります。
(2)購入する不動産の評価が高い
投資物件の評価が高いとローン審査が有利になります。とくに新築物件や条件のよい土地は評価が高くなる傾向です。ただし、新築分譲マンションは、築年数の経過により家賃が下がりやすく、家賃収入でカバーできないほど物件価格が高額なため、注意しましょう。
(3)共同担保できる物件がある
融資を受けて購入する物件のほかに「ローンを完済した」または「半額以下まで返済した」物件を所有しており、担保を設定できる場合はローン審査に有利です。
金融機関によっては共同担保ができなかったり、物件によっては認められなかったりするケースもあるため、共同担保できそうな物件を所有している場合は、金融機関に相談してみましょう。
(4)不動産投資の実績がある
すでに、不動産投資で順調に利益をあげられていれば、その実績が評価されます。投資の経験を踏み実績をつくるほど、融資を受けやすくなるため、不動産投資に慣れてからフルローンで投資を拡大していくのもおすすめです。
万が一、うまく運用できていない不動産があれば、フルローンの審査は不利になることを覚えておきましょう。
まとめ
不動産投資でフルローンを組めるのは「資金力がある人」かつ「低金利で融資を受けられる人」です。ただし、フルローンを組めるとしても、フルローンによるリスクや注意点がなくなるわけではありません。少しでも頭金を用意したほうがキャッシュフローはよくなります。
とはいえ、フルローンだと理想の物件を見つけたときにすぐ購入できたり、キャッシュを手元に残しておけたりとメリットがあるのも事実です。リスクや注意点をよく理解したうえで、それを超えるメリットを見いだせる方は、検討してもよいでしょう。
不動産投資は資金計画が成功のカギを握ります。信頼できる不動産会社を見つけて、あなたにぴったりの方法で進めていきましょう。
お役立ち資料
資産運用に関する資料を無料でダウンロードいただけます。